割引の対象となる手形 | 全国の法人または個人が振出した約束手形ならびに為替手形 |
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割引金額 | 手形振出人の信用度合に応じて決定させていただきます |
割引料率 | 年率 2.80 % ~ 15.00 % |
手形割引の見積り時間 | 15 分~60 分で割引の可否と割引料をお知らせする事が可能 |
お見積りの所要時間 | 15 分~60 分 |
手形割引の担保 | 必要ありません。 |
手形割引に伴う手数料 | 660円 ただし手形割引アプリ経由の申込時は無料です |
手形割引取扱可能地域 | 日本全国に対応いたします。 |
返済の方法 | 手形の現金化による一括弁済 |
返済の期間 | 手形の割引日から満期日の翌営業日まで |
手形割引の必要書類 | 身分証明書・印鑑証明書・手形の成因を裏付ける書面等 |
諸費用 | 送金手数料770 円(送金の場合のみ) |
遅延損害金 | 年率20.00 % (※割引した手形が不渡りの場合のみ) |
手形割引は、手形の振出人(為替手形の場合は引受人)の信用を基に審査致しますので、民事再生又は債務整理手続中であっても問題なく手形割引がご利用頂けます。
手形割引には何ら問題ありません。事業を始めて間もない方、法人、個人、倒産歴、不渡歴にかかわらず手形割引のお取引は可能です。
零細企業や個人事業主が振出した手形でも割引は可能です。手形割引の審査のポイントは、手形振出人の支払能力で、規模の大小ではありません。 ただし、支払能力の判断材料が入手できない場合には、お断りする場合が有りますので、まずはご相談下さい。
この場合は手形割引ではなく、「手形貸付」となりますので「無担保融資」を選択してお申込み下さい。ビジネスローンの審査に問題がなければ、融資として資金の調達が可能になります。
お申込み頂く手形にもよりますが、殆どの場合30分から1時間程度で割引の可否と割引料をお知らせすることができます。稀ですが、調査の難しい振出人の場合に1日お時間をいただく場合がございます。
割引実績のある手形の場合、割引申し込みから資金化するまでは最短で1時間程度ですから、即日の資金化が可能です。割引実績のない手形の場合、調査の時間が加算されるため最短で2~3時間程度です。
手形の割引利率は、手形振出人の信用や決済能力、興信所の評点などを基に定めています。目安としては上場会社又は優良企業振出の手形で年率 2.8%~4%、中堅企業で年率4%~9%、中小零細企業振出の手形で、年率7%~15%程度の割引利率を適用させて頂いております。
手形割引の受け渡しには次の方法が有ります。お客様のご都合にあわせて選択できますので、一度弊社にご相談下さい。
(1)お客様が手形を弊社事務所に持参し、換金する。
(2)弊社職員が現金をお客様事務所に持参して換金する。
(3)弊社職員がお客様の指定する場所に現金を持参して換金する。
(4)お客様が手形を弊社事務所に郵送し、弊社が現金をお客様の指定する口座に振り込む。
申込人が法人の場合には、代表者個人の保証をお願いしておりますが、それ以外の場合には、担保も保証人も必要ありません。
原則としては、一括での買戻しをお願いいたしておりますが、双方にとって円満な解決策をご提案するよう努力致しております。
まずはお電話にて手形の内容をお知らせ下さい。割引対象の手形をお持ちの場合は、お電話の後に、手形のコピーと手形の成因が判明する資料と共にFAXにて弊社にご送信下さい。申し込みはこれで終了です。
ご集金予定先の会社名と住所、集金予定金額等をお知らせ下さい。事前に調査し、手形割引の可否と割引利率をご回答致します。
手形の金額×手形割引利率÷365日×資金化までの日数=割引料
[計算事例1] 手形金額100万円・手形割引利率7%・資金化までの日数90日 1,000,000円×7%÷365×90=17,260円(1円未満切捨て)
弊社は原則として手形の振出確認はいたしませんので手形の振出人に知れることは有りません。また、お客様の個人情報は法令に基づき厳格に管理されていますのでご安心下さい。
煩雑な書類はできるだけ簡略化するように心がけておりますが、初回お取引時に必要な書類は次のとおりです。
■個人事業主の場合
代表者様の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)、身分証明書、契約書に貼付の収入印紙
■法人の場合
個人事業主の必要書類に加え以下の書類が必要です。
法人謄本(発行後3ヶ月以内のもの)、法人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
注)法人個人共に、手形振出人の信用や割引金額によっては、決算書又は申告書の写しが必要になる事があります。また、取引回数が二回目以降のお客様は収入印紙が不要です。
ケースA(1枚で発行する例) | 手形額面630万・・・収入印紙2,000円 |
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ケースB(2枚で発行する例) | 手形額面500万・・・収入印紙1,000円 手形額面130万・・・収入印紙 400円 合計1,400円(ケースAと比べ600円の節約となりました。) |
ケースA(1枚で発行する例) | 手形額面1,360万・・・収入印紙4,000円 |
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ケースB(2枚で発行する例) | 手形額面1,000万・・・収入印紙2,000円 手形額面 360万・・・収入印紙1,000円 合計3,000円(ケースAと比べ1,000円の節約となりました。) |
ケースC(3枚で発行する例) | 手形額面1,000万・・・収入印紙2,000円 手形額面 300万・・・収入印紙 600円 手形額面 60万・・・収入印紙 200円 合計2,800円(ケースAと比べ1,200円の節約となりました。) |
手形とは、企業間の商取引を活性化する目的で、買掛金債務(商取引の代金)の支払いに支払期日(満期日)までの猶予期間を設け、手形の所持人に手形額面に記載された金額の支払を約束した有価証券である。
この手形は、通貨の代用として企業間債務の支払いに利用する事が可能である。
現金払いと比較し、支払いまでの猶予期間がある手形は、自己資本だけでは実現しない商取引量の拡大に貢献する。
手形には、振出人が支払を約束した「約束手形」と、振出人が引受人に支払を委託する「為替手形」という二種類の異なる形式が併存する。
ただし、本邦で流通する手形の殆どは約束手形である。この形式の違いにより、手形用紙に記載すべき手形要件が異なる事に留意しなければならない。
手形割引を生業とする業界では、形式の種類とは別に、手形が発行された原因(手形の成因)の違いによって、商取引の代金として発行された「商業手形」と、資金調達を目的とする「融通手形」に区分けし、割引可否の指標としている。
手形の裏面には所持人(譲受人)が裏書(記名・押印)する裏書人記名欄があり、手形を譲渡する際に裏書して譲渡することから「裏書譲渡」と呼ばれる。
五つの裏書欄があるため、手形金を受取る権利を誰から誰に譲渡をしたのかを履歴として残す事が可能である。
譲渡する相手方の商号を「被裏書人欄」に表記する事で盗難や紛失により意図しない第三者に盗用される事を防ぐ効果が期待できる。
手形には被裏書人と裏書人が異なる場合に「裏書不連続」を事由として不渡りとする仕組みがある。
手形の満期日(支払期日)までそれを所持する「所持人」は、当該手形の支払期日の数日前に、自身名義の普通預金を有する金融機関に「手形の取立て(現金化)」を委任しなければならない。
当該手形は、手形交換所を経由して支払場所として手形表面に記載された金融機関に提示される。この金融機関の当座預金に手形額面以上の預金残高があれば額面の手形金額が決済され、金融機関の翌営業日または翌々営業日に取立てを依頼した者の普通預金口座に入金されて現金化する。
万一預金残高が不足する場合には「資金不足」、当座預金が無い場合「取引無し」、という付箋が貼付されて、不渡手形が取立人に戻る。当然ながらこの場合、取立人の口座へ手形金は入金されない。
手形には企業間の商取引を活性化する利点がある一方、手形の満期日(支払期日)に手形の額面に記載された債務を負担する債務者(以下「手形金債務者」という)が、手形代金を決済できない場合には、「不渡り」となり銀行取引停止処分のトリガーとなり、倒産や廃業の原因となってしまう。
このような事態に至らないため、手形を発行する企業には、将来の入金予定や資金繰りを考慮した、綿密な資金計画が求められる。
不渡りとは、発行された手形や小切手が決済不能で、その最終所持人(取立人)に額面の金額(手形金)を払えなかった事を指す。
ただし、この不渡りには0号、1号、2号と三つの種類があり、債務者の決済能力に関わる1号不渡りを半年以内に二回以上発生させると「銀行取引停止処分」となり、金融機関との取引が制限され事実上の倒産状態(経営破綻)となる。
・0号不渡りとは、形式不備・裏書の不連続や呈示期間経過・期日未到来など手形金債務者の手形決済能力に起因しない不渡りである。
・1号不渡りとは、決済資金の不足・当座取引無し、など手形金債務者の手形決済能力に起因する不渡りである。
・2号不渡りとは、契約不履行・偽造・詐取・盗難・紛失などを事由とする不渡りで、偽造および変造の場合には、その事実の疎明資料を金融機関に提出する事により異議申立提供金を免除される場合がある。
1号不渡りを原因とする銀行取引停止処分では次の懲罰が考えられる。
①決済口座の強制解約
②全ての借入金の期限の利益の喪失により借入金全額返済の一括弁済義務
③借入金残高と預金残高の相殺
④金融機関に差し入れた担保物の換金
などが考えられる
手形法では、紙の手形用紙(金融機関の統一手形用紙)を、約束手形として有価証券に転換させ、また流通すべく、必ず記載しなければならない要件を「手形要件」として定めている。この要件を一つでも欠いた手形は手形とは云えない。
約束手形の手形要件は次のとおり。
①「約束手形」という文言
②「約束手形と引換えに支払を約束する」という単純な文言
③「金額」
④手形金を決済する日付である「支払期日」
⑤決済の際の「支払場所」となる金融機関名
⑥手形が発行された日付である「振出日」
⑦手形を譲渡する相手方となる「受取人」の商号
⑧振出人の住所である「振出地」
⑨手形金債務を決済する「振出人」の記名押印
以上が未記入の手形を譲り受けた者は、振出人に確認のうえでこれ(白紙部分)を補充する必要がある。ただし、誤記の訂正には振出人の押印が必要であるため、細心の注意が必要となる。
為替手形の手形要件は次のとおり。
①「為替手形」という文言
②「為替手形と引換えに上記金額をお支払い下さい」という文言
③「金額」
④「支払期日」
⑤「支払場所」となる金融機関名
⑥手形が発行された「振出日」
⑦手形を譲渡する相手方となる「受取人」の商号
⑧振出人の住所に相当する「振出地」
⑨「振出人」の記名押印、署名
⑩振出人から手形金債務の支払いを委託された「引受人」の記名押印
⑪手形金の支払いを引き受けた「引受日」
前記⑩の「引受人」が支払期日に手形金債務を決済する債務者である事が、約束手形との大きな違いである。つまり、約束手形では振出人、為替手形では引受人が手形金債務を決済する債務者(以下「手形金債務者」という)である事に留意する必要がある。
印紙税法には、「手形を完成させた者に収入印紙を貼付する義務が生じる」という規定がある。このため一般的為替手形は、振出人の記名が無い未完成の状態で引受人が、振出人に譲渡するという約束手形とは逆の流れで発行する。
そして振出人が自身の署名押印などを終えて収入印紙を貼付させている。したがって為替手形を利用する最大の目的は、手形金債務を負担する者が手形発行に伴う印紙税を削減するためである。
未完成で譲渡される為替手形は、完成までの過程が複雑でその際に誤記が生じると引受人の訂正印が必要となる場合があるなどが嫌気され、一般には普及していない。
10-1.手形割引とは
「手形の現金化を目的とする遡求権付き手形の売買」であり、この売買の売主が、「手形割引依頼人」であり、買主は「手形割引業者」又は「預金取扱金融機関」である。
ちなみに「遡求権」とは、過去のある時点まで遡って効力を及ぼす事であり、割引対象の手形が不渡りとなった場合に、手形所持人(手形割引業者など)が手形割引依頼人(裏書人)に手形の買戻しを求める権利を指す。
また遡求権を行使され、手形を買戻した裏書人は、買戻した手形の自身の裏書を抹消し、さらに自身の前に別の裏書人の記名が有る場合には、その裏書人に(複数でも可)手形の買戻しを請求する事が可能である。
このような遡求が繰り返されると最後には手形の名宛人(最初の裏書人)が手形金債務者に買戻しを請求する事になるが、手形金債務者は当該手形を不渡りにした本人であるから、既に経営破綻し、名宛人の買戻し請求に応じられない場合が殆どで、名宛人の不良債権となる場合が多い。
手形割引に際し、手形割引業者が受取る手数料が「手形割引料」であり、この手数料は一般に金額×日数×利率で算出するが、利息ではなく、売買手数料であるため利息制限法の適用はない。割引に伴う手数料の仕訳は、「手形売却損」となる。また手形割引料は割引対象手形の手形金債務者の信用度合に比例して変動する場合が多く、リスクの低い企業の手形割引に関する割引料は低く、リスクの高い企業の手形割引料は高いという傾向がある。
さらに預金取扱金融機関に支払う「取立料」や手形割引業者に支払う「送金料」などの手数料を控除される場合もある。これらが課税売上又は支出であるのに対し「手形割引料」は非課税である。
また、本邦で手形割引を業とする者は、貸金業登録または銀行免許が必要となり、無登録又は無免許業者による手形割引は違法行為でるため、貸金業者による手形割引の場合には、貸金業登録番号を確認すべきである。
手形割引料は、手形の額面金額と割引料率(年率〇%と表記される)、及び手形を割引した日から手形が現金化するまでの「日数」を乗じて算出する。現金化までの日数の計算方法には「片端計算」と「両端計算」があり、割引日から支払期日までの日数に1日を加算する方法は「両端計算」と呼ばれ、加算しない場合を「片端計算」と呼ぶ。
これに支払期日から手形が現金化するまでの日数(取立日)が加算される仕組みだ。
貸金業登録済み手形割引業者による手形割引では、割引料率と共に「実質年率」が表示され、割引依頼人が受取る金額を元本と仮定し、「手形割引料」と「取立料」を片端計算による資金化日までの「日数」で乗除して実質年率を求める。
割引料率は表面上の利率であり、日数の計算方式(「片端計算」と「両端計算」)により異なる手形割引料が算出されるが、実質年率の表記には法律で定められた共通のルールによる片端計算が適用されているため「手形割引料」の比較に適している。
しかし、預金取扱金融機関による手形割引では実質年率の表示はない。
当然であるが手形割引を業とする業者は、支払期日に不渡りとなる手形の割引は避けなければならない。しかし、不渡りを予見する事は経験豊富な担当者でも容易ではない。一般的には興信所が調査した資料を基に割引の可否を決定している。
営利を目的とする手形割引は、どのような指標でその可否を決定すべきだろうか。
一般的預金取扱金融機関の手形割引では、手形割引依頼人の信用度(割引された手形の買戻し能力)を重視するのに対し、手形割引業者による手形割引では、手形金債務者の信用(決済能力)を重視する。
またこの、手形金債務者の決済能力が劣る場合や不明の場合には手形割引依頼人の買戻し能力を考慮して可否を決定する。
したがって、金融機関の手形割引では、「手形割引依頼人の信用度」、「担保物の金銭的評価額」、保証人又は保証協会の「保証限度額」、各割引銘柄一者あたりの「割引残高の上限金額」など。
一方、手形割引業者による手形割引では、手形金債務者の「手形の成因」や「倒産確率」などを考慮する、また両者に共通して利用される指標は、手形金債務者の「格付(評点)」である。
前述のとおり手形割引の指標で多用される「格付」は、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの大手興信所が100点満点の「点数(評点)」で格付けする。
しかし、この評点には格付け対象企業の「社歴」や「代表者の人柄」など、手形決済能力とは無関係な審査項目が含まれているため、手形割引の審査基準に最適な指標とは言い難い。このような意見を受け各興信所は、格付け対象企業の財務状況や一般企業から興信所に対する信用照会の頻度(信用照会が多くなると、支払遅延などの問題が生じている場合が多い)などを重視し、企業が倒産するリスクを確率として算出した「倒産確率(グレード又はリスクスコア)」を新たな指標として開発した。
この倒産確率は、理想的な手形割引の指標として一部の手形割引業者に採用されているものの、高コストと、収録企業数が少ない事がネックとなり、一般には浸透していない。
また、同一の企業でグレード又はリスクスコアによる倒産確率が大きく異なり、どちらを信用すればよいかを迷う場合には、調査年月日の新しさ、もしくはリスクの高い倒産確率を優先して手形割引の指標とする事が最も理想的な審査方法と云える。
仮に、借入金が年商を超える大企業の評点が51点で、無借金経営の零細企業の評点が43点とする。この仮定に基づけば51点と格付けされた大企業の手形が、決済される可能性が高く手形割引に適していると誤認されがちである。
しかし、倒産確率を調べると大企業は、借入金が多く倒産する確率が高く、零細企業については無借金である事を理由として倒産の確率が低いという実例も多いため、手形割引の審査では一度調べてみる価値の有るデータである。
また、倒産確率が急激に悪化している場合、手形の乱発や支払いの遅延などを原因とする信用照会が多発している事が考えられる。
さらに、一回目の不渡りが発生した、または反社会的組織との繋がりが表面化などによっても倒産確率が悪化するため、いつどのように変化したかを調べる事により、評点より正確な手形割引の可否が判断できる。
手形割引では何故、「手形が発行された成因(手形が発行された原因)」を調べる必要があるのだろうか。
前述のとおり手形は、企業間の商取引で発生する債務の代金として支払われるのが当然であるが、時として商取引を伴わず手形だけが発行されてしまう場合がある。
これら手形は、その成因から「融通手形」と呼ばれている。融通手形は、手形が発行可能な二者間で同額を発行し、それを交換して互いにその手形を割引して現金を得る仕組みだ。商取引で発生した「商業手形」とは外見は同じでも、全くの別物と区別し、次の事由により商業手形とは異なるプロセスで手形割引の審査しなければならない。
手形は、手形要件を備え、かつ、手形金額に見合う手形金債務者が債務を負担していれば割引し、現金化する事が可能になる。
このため、借入ができない又は借入している時間的余裕のない企業の資金調達手段として利用される事は珍しくない。
そのプロセスは次のとおり。まず、手形による資金調達を希望する二社以上の企業が、等しい金額の手形(満期日は同日、又は融通手形を提案した企業が先の日付となる。)を発行し、その手形を交換して裏書する。
そして手形代金の成因となりそうな契約書や注文書を捏造する。そして異なる手形割引業者または金融機関へ持ち込んで割引する。
割引の際に手形割引人から手形の成因を尋ねられるため、捏造した前記書面を提示し、手形割引人を欺罔して現金化するのである。そして交換した手形の満期日が到来した時点で、融通手形を決済し。調達した資金を決済する。
この資金調達方法は手形割引業者を欺く詐欺的資金調達方法である。このような手形割引を防止するためには手形の成因を疎明する資料を複数(できるだけ多く、)徴求しそれらの矛盾をあぶりだす事である。どうしても判断できない場合には、現場に訪問して肉眼で確認すべきである。
融通手形はその成因から商業手形と比較し不渡りとなる確率が高く、そのうえ、その不渡りが融通手形を交換した相手方(手形割引依頼人)の不良債権として影響し、手形割引依頼人までが連鎖倒産してしまう可能性が高く、手形割引人の不良債権となりやすい。
融通手形の振出人が、いかに高い格付の企業であろうが、融通手形を発行しなければならない程に資金繰りが逼迫している企業であるが故に、倒産する可能性は高く、評点を過信してはいけない。
前記と同様に企業Aと企業Bで500万円の融通手形を交換し、互いにその手形を割引した場合で、Aが先に倒産した場合Bはどうなるであろうか。
まずBには、Aが発行した不渡り手形500万円を買戻す義務が生じる。それとほぼ同時にBが発行した自身の手形500万円を決済する必要が生じる。
このためBは、500万円の倍額となる合計1000万円の資金を用意しなければならない。
Aの手形が商業手形であったならば500万円の手形を買戻すだけで終わったものの融通手形においては、2倍の資金を用意しなければAの倒産に連鎖してBも倒産する可能性が高い。
さらに融通手形は、麻薬に例えられるほど抜け出すのが難しい。
なぜなら、企業AとBが交換した融通手形の支払期日に、Aが決済資金を用意したとしても、Bが用意出来なければ、またAとBで新たな融通手形を交換して再度手形を割引しなければならないからである。
これを繰り返すうちに、融通手形の金額と枚数が増えてしまう。さらに、Aが割引可能なBの手形の上限金額に超えた場合Aは、Aが所持するBの手形と企業Cの手形を交換し、Cの手形を割引する。
さらにBとCの手形の割引可能額の上限に超えた場合Aは、BまたはCの手形を企業Dの手形と交換してDの手形を割引するなど、他者の手形と再交換又は再々交換して割引するという方法で融通手形による利害関係人を増やしてしまう。
この場合、AからDまでの4者のうち1者が倒産すると4者全てが連鎖して倒産する可能性が生じる。
融通手形を発行する企業の多くが決算を粉飾している。融通手形の額面の金額を売り上げに計上する企業である(その方が融通手形の割引が容易になる)。この場合、年商1億円の企業が、1年間に2億円の融通手形を交換した場合、年商3億円に水増しされてしまう。
これにより決算書上の売上高が増え、結果として当該企業の格付けが嵩上げされてしまう事もある。また、決算書の粉飾に手を染めた企業に多いのは、決算期末に資金調達し、預金残高を増やし帳尻を合わせようとする企業である。
決算書を粉飾する企業でも、いくつもの科目を同時に粉飾すると操作が複雑になるため、手形割引を生業とする者は改竄されていない大部分に注目すべきである。
手形割引の審査に於いては、手形割引依頼人の決算書に付属する「勘定科目内訳書」の支払手形・受取手形・売掛金・借入金の各内訳書に着目すべきである。
たとえ粉飾企業であろうとも勘定科目の内訳書を分析する事である程度の融通手形をあぶりだすことが可能である。
反社会的組織の排除が進む現代。
手形割引に於いても手形割引依頼人と割引対象手形の手形金債務を負担する債務者が反社会的組織でない事を調査する事は当然である。
以上のとおり、手形の成因を把握する事は手形割引の審査における最重要課題と云っても過言ではない。
手形の成因が商取引ならば、興信所の格付け(評点)と手形決済能力は比例して高まる傾向にある。しかし、融通手形では、興信所の格付けと手形決済能力が比例せず、従前の審査方法の常識が通用しない。以下にその実例を詳述する。
興信所が倒産確率の提供を開始する以前に筆者は、年商12億円あまりの中小企業より合計金額6千万円強にのぼる複数枚の手形割引依頼を受け付けた。
これらの手形は、計9者の企業が発行した手形26枚で、評点34点の個人経営の零細企業をはじめ、資本金1億6千万円で評点が60点の大企業の手形まで様々だった。
その審査を開始すると、手形割引依頼人の決算書に、不審な受取手形と支払手形が散見された。このため複数の追加資料を徴求して入念な調査を実施した結果、割引を依頼された(大企業を含む)9者の手形の殆どは融通手形であることが判明した。
このため手形割引を断念し、6千万円の手形を担保とした2千万円の金銭消費貸借契約を締結し、同金額の手形担保融資を実行した。事前の予想では、評点の低い企業の手形は不渡りとなり、評点が高い企業の手形が決済されるであろうと考えた。
それから半年後、手形割引依頼人の倒産と前後して評点60点の企業を含む評点45点以上の企業6者が次々と連鎖倒産し、個人を含む評点が45点未満の企業3者の手形は辛うじて決済された。この時幸いにも決済された手形が2千万円を超えた為、貸付金は完済され、余剰金は債務者へ返還した。
本件では、評点が高い企業の手形が不渡りとなり、評点の低い企業の手形は決済されるという事前の予想と正反対の現象が発生した。結果として決済された2千万円強の手形を発行した個人を含む各企業の手形は、割引して現金化する事が難しかった事が幸いし、融通手形としての価値が低く融通手形の相手として適していなかった。このため融通手形の枚数や金額が少なく、倒産した企業に対する被害が少なかった。
他方で資本金が1億円を超える企業は割引が容易であったため、融通手形グループに属した多くの企業からもてはやされ、融通手形の金額や枚数が増えてしまった。このため、融通手形の相手方が倒産した場合の不良債権が高額となり、先に倒産した企業に連鎖して倒産してしまったのだった。
したがって、商取引の代金である商業手形は評点が高ければ決済される可能性が高まるが、融通手形はその逆で評点が高いと不渡になりやすいという反対の特性を持ち合わせる。手形割引の審査を担当する者はこの特性を充分に理解しておくべきだ。
融通手形を交換する企業の役員には、誰かに被害を与えようとする悪意は無いと考える。
しかし、割引された手形が不渡りとなり、かつ買戻しができなければ、手形割引人に被害が発生する。
さらに、融通手形を割引する際の手形割引依頼人は「この手形は融通手形です」と正直に申告する者は稀で、殆どの手形割引依頼人は「工事代金や販売代金又は運送代金」などと手形割引人を欺罔する。
これらの不法行為を知りながら漫然と融通手形を繰り返した企業の役員には被害者に対する賠償責任が生じるだろうか。過去の判例では、融通手形による被害者の訴えにより、手形を発行した企業の役員に「善管注意義務違反」などを認め、被害者への損害賠償を認めた例がある。
責任の重さには差はあれど代表取締役に限らず、取締役にも過失を認める判例が有る。
融通手形の見た目とその手形金債務者にはどのような傾向があるのだろうか。
1.手形の額面金額に端数が無い。
2.手形のサイトが変動する。(120日であったサイトが90日になったなど。)
3.手形の決済日が複数(月末、10日、20日など多ければ多いほど資金繰りが苦しい)
4.業種的に取引に違和感を感じる。(手形の流れが逆であるなど)
5.手形金債務者及び手形割引依頼人が所有する不動産に差押えがある。
6.手形の成因を証明する資料に違和感がある。
このような手形割引を依頼された場合には、追加の疎明資料を徴求し、納得のいく調査が必要である。さらに手形割引依頼人から徴求した決算書の科目明細から、割引対象企業が手形割引依頼人の売掛先であるか仕入先であるかは慎重に判断すべきである。
手形割引の審査において手形金債務者の資金繰りを推定する事は極めて重要だ。
一般に流通する手形の手形金債務者の殆どは法人で、かつ不動産を所有している場合が多いため、夫々の登記を閲覧する事でその資金調達余力を推定できる場合がある。
まず、法人の手形金債務者の動産譲渡及び債権譲渡ファイルに、動産譲渡登記ならびに債権譲渡登記が設定されているかを確認し、さらに不動産登記ファイルに、「差押え」及び「高金利業者の抵当権や根抵当権又は所有権移転仮登記」などが登記されている場合、当該企業の資金繰り逼迫が伺える。
さらに、抵当権や根抵当権の合計金額を不動産の担保評価額より控除する事で、新たな資金を調達する能力の有無や調達可能金額が推測できる。このため、不動産価格の簡易鑑定方法を習得する事、又は宅建士の試験に合格する事は手形割引上達への第一歩である。
前渡金として発行された手形の割引は商業手形割引と云えるだろうか。
結論としては商業手形割引であるが、リスクの高い手形割引で有ることに間違いない。
例として、建設工事の請負契約を締結する場合、施主が施工業者に対し三割程度の契約金を支払う事が慣例であるが、それを手形で発行する企業もある。
しかし、この手形を受領した企業が受領した手形を割引して現金化したのにもかかわらず工事を完了せずに、経営破綻してしまう場合がある。
この場合契約金(前渡金)として手形を発行した手形金債務者は、「契約不履行」を事由として支払期日に異議申し立て供託金を提供し、手形を不渡りとしてしまう場合がある。
ただし、手形の振出人は善意の第三者(手形所持人)に対抗する事ができないため、訴訟で争ったとしても手形割引人が敗訴する事はないが、前記契約不履行がトリガーとなり、手形金債務者が倒産してしまう場合もあるため、確定した債権により発行された商業手形の割引が安全であることは云うまでもない。
手形割引を生業とする業者ならば一度は経験するであろう瑕疵ある手形の典型は、偽造や盗難手形である。
盗難手形には、次のような傾向がある。
1.手形の成因を裏付ける書証が乏しい。
2.業種的な商取引に違和感がある。(例としては、建設会社の手形を食品会社が裏書している場合など。)
3.裏書人の住所が遠隔地。(例としては、北海道の振出人で、第一裏書人が大阪で割引依頼人が東京などの場合。)
これらの特徴がみられた場合、割引依頼人の同意を得たうえで手形の発行人や裏書人に問い合わせることで、盗難手形であるなどの情報を得る事が可能である。
白地の手形用紙を入手できる者であれば、誰もが知るあの企業が発行したような手形(偽造手形)を偽造する事は容易い。
不審な手形の割引を依頼された場合、盗難手形と同様の特徴が有るか確認をすると共に、手形の最下部に印字された、手形金債務者の当座預金の口座番号にインターネットバンキングで送金手続きをすることにより、口座番号の相違を確認する事が可能である。
当然であるが、送金手続きを中断すれば資金移動は生じない。
偽造手形を割引してしまった場合に手形割引人が債権を回収する事はほぼ期待できないが、盗難された手形の場合、手形割引業者として、手形割引の過程で、手形の成因を確認している事など、過失がない事を証明できれば争いの余地があり、和解となる場合もあるので漫然とした手形割引を行わないことが損失の回避に役立つ。
また、手形割引の依頼人は、自分が割引する手形が事故手形である事を知らないケースが多く、そのような手形は、裏書人が4者又は5者と多いことが特徴である。
融通手形が減りつつある現代、昔ながらに多いのは倒産を覚悟して手形を乱発する企業である。
既に1回目の不渡りが発生していれば見分ける事は簡単であるが、不渡りを出していない企業で、廃業を決めた経営者、又は経営を譲り受けた悪意の経営者などが金融ブローカーを通じて金額が記入されていない白紙の手形を乱発する事は珍しくない。
金融ブローカーの間では手形帳1冊(25枚綴り)が10万円程度で売買されていると耳にする事もある。
金額と支払期日が白紙の手形用紙を手に入れたブローカーは、割引又は資金繰りが逼迫する第三の企業の手形と交換する方法により、新たな企業の手形を入手し、資金繰りに都合の良い金額と支払期日を記入し割引する。これら手形の特徴は、(複数の手形において)手形番号の順序と支払期日の順序が関連せず手形の番号と支払期日が比例しない事である。
手形割引と混同される取引に手形貸付がある。手形貸付は資金需要者が金融機関に手形を発行して融資を受ける事であり、手形を利用した貸付であるから、利息制限法の対象となる取引である。
手形振出日が借入日、支払期日が約定の弁済日に相当する。筆者は、手形貸付の手形が不渡りとなった例は聞いたことが無いが、金融機関の判断により銀行取引停止処分を受ける可能性が無いわけではない。
平成の30年余りで手形流通量はおよそ1/20に減り、現在もなお減り続けている。このため、今後10年程度で手形や手形交換所は消滅している可能性がある。したがって、本邦における手形割引専門という手形割引業者数は僅かで、今後増える可能性はない。
前記手形流通量減少には以下の事由が考えられる。
第一に、企業の内部留保が増加し、手形(による買掛金の支払延期)が不要になった。
第二に政府は、手形による支払いを、優越的地位にある企業の下請けいじめと捉え、大手企業による手形の支払いを制限している。
第三に全国銀行協会が運営する「でんさいネット」で流通する電子記録債権(でんさい)には手形を代替えする機能があり、かつ、手形と比べ多くの利点があるため、手形からでんさいに切替える企業が多い。
これらの事由で危機感を抱く手形割引専門業者は、手形割引に代わる営業品目として「電子記録債権割引(でんさいの割引)」及び「貸付」に参入する企業がある。電子記録債権の割引は、手形割引と同様の方法で審査を行うため、何の問題はない。しかし、貸付は手形割引とは異なるノウハウの蓄積が必要で、それを経験していない者は不良債権発生によるケーススタディを重ねなければならない。
したがって、貸付による利息収入で十分な利益を生むまでには多くの時間と、不良債権を償却する体力が必要となる。貸金業者には純資産制限があるため、十分な純資産がないままに貸付に参入した場合、その貸金業者が純資産制限に抵触する事も考えられる。したがって、手形割引に代わる事業として、貸付を検討するには、後継者問題を含む超長期間の事業計画を策定し判断すべきである。