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高金利被害の実態

 全国事業者金融協会 副会長
  株式会社クレイリッシュ
  代表取締役 髙木 秀男

 貸金業法の改正以降、この潜脱を目的とするあらたな金融が生まれた。それは「債権の売買(ファクタリング)」を偽装したヤミ金融(以下「似非ファクタリング」という)で、無担保貸付が困難な貸金業者を尻目に、同貸付の主たるファイナンサーに台頭してしまった。
さらに、貸金業者の減少を好機と捉え新規参入する者も多く、今後も高金利被害が拡大するとみられる。
 貸金業者が貸金業法で規制されている一方で、債権の売買を規制する法律や、その業者を登録する制度が無いため、反社会的勢力ですら参入できる業態である事が、ファクタリングの最重要課題だ。これら似非ファクタリング業者の債権売買手数料を金利に換算すると、年率100~360%と高金利で、その被害者は全国に拡がる。
 事業者向け貸付を生業とする筆者が経営する会社では、運転資金の借入を希望する全ての融資申込人にファクタリング業者との取引状況を聴取している。すると、申込人の9割に取引履歴があり、うち4割は現在も取引を継続しているという有様だ。また、似非ファクタリングと取引継続中の申込人の半数が複数の似非ファクタリング業者と取引していた。
 2017年警察は、5件の似非ファクタリング業者を摘発し、実質的経営者などを貸金業法違反などの容疑で逮捕した。しかしこれらの摘発は偽装の手口が稚拙、もしくは経営者に犯歴があるなど、容易に検挙できる事案に限られ、偽装の手口が巧妙な大手似非ファクタリング業者は一社も摘発されていない。  本稿では似非ファクタリングによる実質的貸付をいかにして債権の売買に偽装するか、似非ファクタリングの仕組みや手口を解説し対策を検討する。
1.似非ファクタリング誕生と増加の背景
 1986年、本邦の貸金業登録件数は最多の4万7千者あまりを記録したが、その後は減少の一途を辿り、2019年9月の登録件数は1680者と最盛期の3.5%である。さらに現在でも年100者のペースで減少が続いている。また、年商1千万円以上の事業者向け貸金業者に限れば全国で271者である(2019年8月帝国データバンクCOSMOS調べ)。
 事業者向け貸金業者にはグループ内の企業に融資をするためだけに貸金業登録を行っている者や、金融の媒介を専業とする者など、一般企業には貸付をしない者も存在する。
したがって、一般の事業者への貸付を行う年商1千万円以上の事業者向け貸金業者は全国でも200 社程度であろうと推定される。
 また、現存する貸金業者は都市部に集中し、地方では、貸金業者不在の空白地帯が大半となっている。これらの変化により本邦では、中小企業向け貸付の需要と供給が均衡しない供給不足の状態が10 年以上も続くという異常が、似非ファクタリング増加の背景にある。
 貸金業者が減った原因は、段階的に引き下げられた法定の上限金利である。世界一厳しいと云われるこの法定金利により貸金業者は、リスクが高い中小企業向け無担保貸付で採算を維持する事が困難となった。このため、債権回収が確実な不動産などの担保を徴求する有担保貸付に活路を求めた。その結果、前述の法定金利引下げ前に3:7であった無担保貸付と有担保貸付の件数比率は現在2:98となり、無担保貸付は激減した。(株式会社クレイリッシュ実績)
 東京経済という興信所は、2016年から2018年の3年間に1332件(債権譲渡登記全体の約2割)の債権譲渡登記を公表している。この登記は、債権を担保とする貸付け、又は商取引の債権保全を目的として、「売買」又は「譲渡担保」を原因として被担保債権(担保とする売掛金)について他の債権者に対する対抗要件を具備する目的で様々な業種で利用されているものである。
 筆者はその登記情報から債権の譲受人の業種を分類した。するとそのうち753件は似非ファクタリング業者が債権の譲受人であり全体の57%を占める。18 %は仕入れ先、12%は預金取扱金融機関、11%は事業者金融であり、その他3%であった。 この件数から一定の仮定で逆算した似非ファクタリング業者の1年間の貸付件数はおよそ6千件で年間収入(高金利被害金額)は25億円以上程度と想定される。

2.そもそもファクタリングとは
 ファクタリングとは、資金需要者が保有する売掛金という債権をファクタリング業者に売却し、早期に現金化する行為を指す。この取引は後述の「二者間ファクタリング」と区別すべく「三者間ファクタリング」と呼ばれ、ファクタリング業者(買主)と資金需要者(売主)及び売掛先(売掛債権の債務者)の三者間の合意、もしくは二者間で売買に合意した事実を売掛先へ通知する事で成立する。よって売買対象債権の支払期日が到来した場合は、ファクタリング業者が買取った債権を売掛先から取立てて完結する。

 

【三者間ファクタリング取引の構成図】

 

 

 この三者間ファクタリングは、売掛先の倒産などにより債権が回収不能となろうとも、債権の売主が買戻す必要のない「ノンリコース契約」であるため、売掛金の貸倒れを防ぐ為の保険の役割も担っている。このため、三者間ファクタリング業者が受取る手数料には利息と保険料が含まれる。
 本邦における三者間ファクタリングは、ファクタリング業者へ債権を売却する事を、売掛先に知られたくないと考える資金需要者には敬遠されるため、ブランドで安心感のある銀行系列のファクタリング会社が売買の主役である。
 一方、似非ファクタリング業者が偽装に用いるファクタリングは「二者間ファクタリング」と呼ばれ、債権の売主と買主の二者間の合意で成立する売買契約である。このため、売掛先の同意を必要とせず、債権の売却を売掛先に知られたくない資金需要者に急速に普及した。前述の三者間ファクタリングでは債権の買主であるファクタリング業者が買取った債権を取立てて取引が完結した。
 しかし、二者間ファクタリングでは売掛先が債権の売買契約の存在を知らないため、資金需要者(売主)へ買掛金債務(売買された債権)を支払う。ゆえにこの後、資金需要者から似非ファクタリング業者に回収額と同額の金員を支払って完結する。これら二者間ファクタリングの資金移動ルートは貸付と同様であり、このままでは債権の売買とは言えない。

【二者間ファクタリング取引の構成図】

 

 

 このため、似非ファクタリング業者が売買対象債権を取立てしない根拠として債権回収を売主に委託する契約が必要となる。この契約は、債権の買主が債権の売主に、売買対象債権に係る請求や回収などを無償で委託する契約であり、資金需要者が債権を回収した後に二者間ファクタリング業者に支払う事を約束する契約で、それを不履行した場合には元本の2倍に相当する高額な違約金が生じる。さらに、事前に作成した債権譲渡通知書(債権が売買された事を売掛先に知らせる書面。)が売買された債権の債務者である売掛先に送達される。それに加え、売買の対象でない他の売掛先にも同様の通知が届く仕組みである。
 売買の対象でない売掛先にまで債権譲渡通知書が送達されて事由は以下のとおり。売買対象債権の支払日が経過しても資金需要者から弁済されないのであるから、売買対象債権の債務者には売掛金が残っていない可能性が高い。このため、他の売掛先に債権譲渡通知書を送達し、売掛金を回収しようと企てるのだ。さらに、債権回収業務委託契約に違約しているのだから、その違約金を回収する為に、ほぼ全ての売掛先債権譲渡通知書を送達してしまうのである。資金需要者は、この通知を発送される事を避けるため、必死に資金繰りして似非ファクタリング業者に返済しているのだ。つまり債権回収業務委託契約こそが、実質的貸付を債権の売買であるかのごとく偽装する要の契約である。


3.似非の根拠
 似非ファクタリング業者の債権売買が偽装である根拠を以下に示す。
事例1.2019年弊社が貸付するAが倒産した。同社に対する貸付は売掛金を担保とする売掛債権担保貸付であった。このため他の債権者に対する対抗要件を具備する(優先的に回収する)目的で「債権譲渡登記」を済ませていた。Aの倒産により弊社は、担保権を実行すべく、債権譲渡登記の売掛先に対し法務局が発行した「登記事項証明書」を送達し、売掛先に支払いを催告した。すると売掛先は弊社以外からも催告され、誰が真の譲受人であるかを確知できないとして未払金額を法務局に弁済供託した。その後、法務局より弊社を含む被供託者四社の商号が記載された供託通知書が各々に送達された。弊社を除く被供託者三者は、Aの売掛金を買ったと主張する似非ファクタリング業者であった。つまり破産したAは、弊社に譲渡した債権を、複数の業者に重複して譲渡していたのだ。弊社は、債権譲渡登記の譲受人として弊社が供託金還付請求権を有していると裁判所に訴え、供託金を回収した。また本件訴訟の被告人三者のうち、Bは、弊社の登記の1年後、Cはその半年後にAの商業登記簿に債権譲渡を登記していた。
 多重譲渡された本件での問題点は債務者による多重譲渡ではない。実は、似非ファクタリング業者による債権の多重買取である。なぜなら債務者の商業登記簿には、複数の譲受人による債権譲渡が登記され、少なくとも似非ファクタリング業者らは債権が既に他者へ譲渡され、売買に値しない無価値の債権であることを承知のうえで売買契約を締結していたのだ。
事例2.2018年弊社が貸付をする顧客Bによれば、不足する運転資金の調達を打診した似非ファクタリング業者Xから120万円以上の請求書を提出すれば100万円を貸すことが可能であると持ち掛けられ、架空の請求書120万円をねつ造し、金員100万円を借り入れた。その後Bは、業者Xの返済日に別の似非ファクタリング業者Yから同様の手口で資金を調達しXに返済した。Bは、その後も複数の似非ファクタリング業者と取引するも、請求書さえ作れば、どの業者からも簡単に借りられたと説明する。さらに、似非ファクタリング業者らがヤミ金融である事は取引すれば誰でも判るという。このためBはこれら複数の業者らに対し、代理人弁護士を経由して業者らの行為が貸金業法などに違反する不法行為であるという書面を送付したところ、全業者の催告が止まり実質的な債権放棄で終わったという。
 二つの上記事例のとおり、似非ファクタリング業者らによる債権の売買は、売買を目的とするものではなく、実質的貸付を債権の売買であるかのように偽装する為の手段である。仮に似非ファクタリング業者が本気で二者間による債権の売買を意図していたとしても、そもそも売買対象債権が実在しているかが確認できない。また売掛先の反対債権や債権の瑕疵による相殺を防げないなどの課題が山積しており欠陥だらけの売買契約といえる。

4.高金利被害の実例
 二者間ファクタリングの資金需要者が売掛金を回収したにもかかわらず、債権回収業務委託契約に違反し似非ファクタリング業者に対する支払業務を怠った実例を紹介する。
 群馬県内で製造業を営むDは、運転資金が不足し一ヶ月後に集金する予定の売掛金計550万円を380万円で似非ファクタリング業者Fに売却する契約で380万円を調達した。そしてFに対する550万円の支払日が到来し、Dは予定通りに550万円を回収したものの、他への支払いや弁済などでその一部を消費してしまい、Fに対する弁済原資は200万円に減ってしまった。Dは、Fに200万円を弁済し、不足する残金の弁済猶予を願い出たがFは、200万円を受領しながらもDの売掛先に対し、売買対象の売掛金をFに譲渡するという内容の債権譲渡通知書を送達してしまった。
 売買の対象となった売掛金は既にDが回収済みであるからFが回収できる売掛金は存在しない。しかし、Dと売掛先で継続的な企業間取引を行っているため、今後支払われる別の売掛金が発生している。このため、債権譲渡通知書を受領した売掛先は、「債権者不確知」(誰に支払えば良いか分からない)を理由として、法務局に弁済供託を行った。
 そこでFは、事前に聴取していたDの他の売掛先に対する売掛債権に対し900万円を上限とする仮差押えを実行した。Dは既に200万円は支払い済みで、未払いの残金は350万円でないかとFに抗議したところ、債権回収業務委託契約に違反したため同契約に規定する違約金1,100万円(元本の二倍)が発生し、その額から200万円を控除し900万円なのだと説明された。
 驚いたDは弁護士に相談し、Fの行為が貸金業法違反にあたり、多額の買取手数料や違約金は公序良俗に反し無効であるから過払金を返還せよ、と提訴した。するとFはDに提供した金員は、貸付金ではなく債権の売買代金であるから貸金業法の適用はなく、Dが債権回収業務委託契約に違反した事を根拠に損害賠償を請求すると主張した。
 DにはFの悪事を証明する証拠書類(契約書の写しや領収書)が無く、裁判は難航した。この裁判が長期化した場合、債権譲渡通知ないし仮差押え通知が送達された売掛先とDとの信頼関係が崩れ、新規受注が見込めない。さらに、棚上げ(供託)された売掛金による資金繰りへの圧迫は想像以上のインパクトで、近い将来に事業の継続が困難となることが予想された。
 Dは会社を倒産させる事だけは避けたいという一心で社員や役員に事情を説明し550万円を借入れし、それをFに支払う事で和解した。だが、弁護士費用30万円の支払いも必要だったので、380万円の借入金に対し元本200万円、違約金550万円、弁護士費用30万円の合計780万円を支出するという最悪の結果に終わった。
5.貸付とファクタリングの比較
 貸金業者が売掛金を担保として貸付する債権担保貸付と二者間又は三者間のファクタリングとの違いや共通点を比較する。
 表1のとおり債権担保貸付と二者間ファクタリングでは多くの点で共通し、かたや三者間ファクタリングとでは全てが異なる。
特に「債務の弁済者」が共に資金需要者である事は重要である。また債権の売買である三者間ファクタリングは、売掛先から直接回収するため売掛先が倒産しない限りは債権回収が可能であるため、安価な手数料で採算がとれる。
一方二者間ファクタリングは売掛先が倒産しなくとも資金需要者が倒産してしまうと債権が回収不能となるため、手数料が高額となり、与信の相手方(誰の信用で資金を提供するか)は資金需要者である。これらの特徴は、貸付の特徴であり、二者間ファクタリングが債権の売買でないことを象徴している。

 

6.似非ファクタリング対策
 《対策1》貸金業法施行規則の改正
 二者間ファクタリングは、法解釈の変更で対策が可能である。貸金業法第2条では貸金業者を、次のとおり定義している。「貸金業とは、金銭の貸付け又は貸付けの媒介及び手形割引ならびにその他これらに類する方法によってする金銭の交付又は授受で業として行うものをいう。」このため二者間ファクタリングをこれらに類する方法と解釈し、二者間による債権の売買で債務者に通知しない取引を貸付と見做すという一文を追加して施行規則を改正する。この変更よって二者間ファクタリング業者も上限金利・参入要件などが貸金業者と同等となり、反社会的組織の排除も可能となる。また施行規則の変更ならば、金融庁単独で対応が可能と考える。
《対策2》少額無担保特例金利の導入
 仮に、前記対策で似非ファクタリング業者を一掃しても、無担保貸付の貸手不在による中小企業の資金繰り悪化は避けられない。ヤミ金融の不法行為は許されるものではないが、金融機関から融資を断られた中小企業にとっては最後の拠所であり、一定の経済効果をもたらしていることも事実である。このためヤミ金融を無くすだけでは倒産または廃業する中小企業が増え、本邦経済を冷やす事になりかねない。 よって、並行して検討すべき事は、事業者向け「少額」「無担保」貸付に関する法令の上限金利の限定的な緩和を目的とする特例の導入を検討する事である。例えば、無担保・無保証人(代表者や役員の保証は除く)の貸付契約で、かつ1千万円未満の貸付を対象として上限金利を年率25%まで緩和し、それ以外の上限金利は全て15%とすることである。従来の金利緩和策は「少額」「短期」貸付を緩和するという考え方であった。しかし、一定期間内の貸付を短期貸付と定義した場合、脱法を目的とする短期貸付の繰り返し、いわゆる「まき直し」が横行する事を防げない。
7.総括
 2020年4月には、民法が改正される。このため、保証人との保証契約に公正証書を作成する義務が生じる。また、債権者と債務者の当事者間で譲渡禁止特約を締結しても原則として債権の譲渡が有効となる。
 この改正よって貸金業者による事業者向け保証人貸付は消滅し、貸金業者から貸付を受けられない事業者が現在よりも増える。さらに、売掛金の譲渡や売買が容易になる。
 これらの変化は、似非ファクタリング業者には大きな追い風となる事が予想され、対策を怠れば高金利被害はさらに増加する可能性が高い。しかし、「少額」「無担保」の事業資金貸付に関する、上限金利が緩和されれば、貸金業者による中小企業向け貸付残高が増加し、ヤミ金融は自然に減る事も期待できる。似非ファクタリングという潜脱は、いずれ最高裁で敗訴して状況が一変する時が来る。その際の最大の被害者は資金調達元を失う中小・零細企業であることは言うまでもない。
株式会社クレイリッシュ 日本貸金業協会会員 全国事業者金融協会会員 〒337-0051 埼玉県さいたま市見沼区東大宮5-33-12 柏洋ビル3階 TEL : 048-682-2300 FAX : 048-682-2302 E-mail : info@901901.jp
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